【映画】ナラタージュを観てきました。前編
公開前に密かに話題になっていた映画『ナラタージュ』を観てきました。
完全にノーマークだったんですが、たまたま予告動画をSNSで見かけて、映像に惹かれて劇場に足を運んできました。
※盛大にネタバレします。
まず最初にこの作品は同タイトルの小説が原作になっているそうですね。2010年に発刊されたそうなんですが……僕は読んだことないです。
レビュー調べてみると酷評はされてないですが、原作は映画以上の鬱展開らしくて。
映画観た後だと「え、大丈夫……?僕この鬱展開に耐えられる……?」って心配になります。
まあ、とりあえず今回は映画だけ感想書いていこうかなと思います。
この映画は基本的に、主人公の回想を繋いだ形(それがナラタージュの意味なんだとか)で進行します。
深夜、一人会社で残業中の主人公・工藤泉(有村架純)。
窓の向こうは土砂降りで、泉は窓の向こうをブランドの隙間からぼんやり眺めています。
後輩「雨に降られてビショビショです」
突然登場した後輩くん(瀬戸康史)はビショビショになったジャケットを指しながら笑っています。
後輩くんにタオルを手渡す泉。
後輩「その時計、好きな人からもらったんですか?」
泉の手に持った懐中時計。
骨董屋だったという後輩くんは泉から時計を受け取って、そう尋ねました。
答えに詰まる泉。
後輩「あれ。止まってる……」
彼はそう言ってネジを巻こうとしたところで、泉はあっと声を上げて彼を制します。
後輩くんは申し訳なさそうに、彼女に時計を返しました。
“こんな雨の日はいつもあなたを思い出す”
そう言って、泉の過去回想が始まります。
事の発端は泉が大学2年の頃。演劇部の顧問だった葉山先生から卒業して初めて、連絡を受けます。この葉山先生は泉が高校生の頃好きだった人でした。
葉山先生「今年で演劇部の生徒も三年の三人だけになってしまってね……人数が足りないから、工藤にも手伝ってもらえないかと思って」
教師が元生徒に連絡取ってくるって今ならなかなかない話なのですが、まあ時代ですよね。
※ちゃんとガラケーでした!
泉は二つ返事で申し出を受けました。
“ 卒業して初めて足を踏み入れる母校、私の足は少し震えていた”
この台詞すごくわかるなぁって思いました。
卒業して僕も初めて母校に恩師に会いに行った時、足が竦みました…………
「大好きな人」が自分の知らないところで変わって、自分の知らない人になっていたらって思うととても怖いです。
演劇部の部室で集まった後輩三人と、泉、そして泉の同級生二人と小野くん(坂口健太郎)。
小野くんは男子の同級生と同じ大学の人で、大学一年の時に演劇をしていたんだそうです。
今日は後輩ちゃんの18歳の誕生日、という事でサプライズパーティーが開かれます。
幸せな、ほのぼのとした空気。
演劇部の顧問である葉山先生も合流してみんなでケーキを食べたり、笑ったり。
ここが、この映画唯一の幸せなシーンです!(苦笑)
“先生が隣にいる、高校時代に戻ったみたいだった”
どうやら文化祭の出し物で演劇をするようで、この夏休みに稽古をしようということのようです。
葉山「さて、何を演じようか?人が増えたから、可能性が広がった!」
葉山先生、本当に演劇が好きなんだなぁ……
稽古の後、泉は社会科準備室へ。
誰もいない準備室、葉山先生と学生時代を過ごしたその部屋で、泉は昔を思い出しています。
葉山「ここにいたんだ。……ねえ、時間があるなら少し話していかない?」
葉山「元気にしてた?」
泉「そこそこです。先生は?」
葉山「俺もそこそこ、かな」
泉「先生は変わらないですね」
葉山「うん。でも工藤はなんだか……変わったね……」
泉「そうですか?」
葉山「……大人になったってことかな」
誤魔化すように、そう言葉にした葉山先生。
泉「先生は変わらないですね。そうやって言いかけた言葉を飲み込むところ」
葉山「……ごめん」
泉「私、帰ります」
学生時代、泉の気持ちに対して葉山先生は明確な返事をしませんでした。
過去を引きずっている泉とその原因の葉山先生の二人きりの空間がそう長く持つはずもなく……あっさり二人の再会は終わります。
この映画、手とか足がポイントになってるんですけど……そこにピント絞った細かな表現がすごく素敵でした。
泉の同級生二人は高校時代から付き合っていて、そんな二人と一緒の泉・小野くんも少しずつ距離が近づいていきます。
付き合ってないけど、小野くんの大学の演劇一緒に観に行くとか……
泉「小野くんってさ、彼女いるの?」
小野「いない」
泉「でも、モテるんだもんね」
小野「そんなことない……俺やりたいことがあるんだ。大学卒業したら靴作りたい。」
大学2年の〜って段階でこの話してるのすごいなって思います……3年ならわかるんですけど、ちょっと早い(苦笑)
小野「実は試作品があるんだ、今からウチこない?」
小野くんの家にお邪魔することにした泉。
………付き合ってないんですよね??
小野くんの作った試作品の靴は、泉の足にぴったりで。
(僕:小野くんすごい泉に足のサイズ聞いてたもんな……)
「すごい!素敵だね!」という泉を小野くんは抱きしめました。
小野「俺、工藤さんが好きだ」
泉「…………ごめん」
泉は靴を脱ぐと、そのまま彼の家を出ていきました。
家を出ると外は土砂降り(!)で、傘を持たない泉は濡れたことで翌日風邪をひいてしまいます。
物語の女性は軽率でないと、話進まないんですけど、泉も小野くんの気持ちにいい加減気付こうよって話なんですよ。
ごめん、泉ちゃん嫌いではないんだけど好きにはなれない………だけど、気持ちはわかる。
土砂降りの雨。ここから過去(高校時代)回想です。
小さな劇場(舞台は富山の田舎町のようです)で『エル・スール』を観ていた泉。
劇場から出ると、やっぱり外は土砂降りで、困っていたところに、傘を差し出してくれたのが葉山先生でした。
“先生の傘は小さくて、私の鼓動が先生に聞こえるんじゃないかってドキドキした”
“先生はこの映画の『静かな雰囲気が好き』だと言った”
風邪をひいて稽古を休んでしまった泉の元に葉山先生がお見舞いに来ます。(僕:!?!)
冷えピタのお金を払うとかいいからとか押し問答。そのあと、葉山先生はおかゆを作ってくれました。
葉山「食べさせてあげようか?」
泉「やめてください、恥ずかしくて余計熱が上がっちゃいます」
甲斐甲斐しく、泉に世話を焼く葉山先生に、泉は言葉をぶつけます。
泉「先生は付き合っている人いるんですか?」
葉山「僕は……あれからずっと、変わってない。そういう人は、考えてないよ」
泉「じゃあなんで優しくするんですか?」
私の気持ち知ってるくせに、と泉。
葉山「ごめん……迷惑だったなら謝る。風邪が治ったら、ゆっくり話そう」
背を向けてしまった泉を見て、葉山先生は帰っていきました。
葉山先生ずるいなぁーー!!
好きな人にそんなことされたら、期待するし、それに「迷惑だった」なんて言えるはずないのに。ずるい。
風邪が治って、稽古に復帰した泉は改めて小野くんの告白を断ります。(よくやった、泉)
小野「葉山先生のこと好きなんだ」
泉「うん……もうずっと前から先生は私の気持ち知ってるの。でも、これは届かない気持ちだから」
“先生と視線が合う。私にはいつも彼が何を考えているのかわからなかった”
まあ……泉ちゃんもあれなんですけど、やっぱり1番傷ついてるのは小野くんだと思うんですけど………あの?って気持ちにはなりました。
全体的にこの物語の登場人物は夢見てる感じがします。
その日学校に行くと、部室には誰もいません。
『あれ、メール届いてなかった?今日は葉山先生の都合が悪くなっちゃって、各自家で練習ってことになったんだけど……』
仕方ないので、小さな劇場で『浮雲』を観る泉。
劇場から出るとやっぱり土砂降り。
携帯には葉山先生から着信が来ていました。
『ちょっとお酒を飲んでしまってね、ここから動けなくなってしまってね』
要するに迎えに来いと。
大学2年生=免許持ってるの図式は多分田舎だからこそ成り立つんだろうなぁ……
今日はちゃんと傘を持っていた泉は、急いで葉山先生の元に向かいます。
駐車場に置いた車の中で、虚ろな瞳の葉山先生は「来てくれたんだ」と声をかけます。
泉が運転する車で自宅へ向かう二人。
葉山「妻のお父さんに会ったんだ」
仕事で来ていたという奥さんのお父さん。
葉山先生は高校時代、泉に自分は結婚をして「いた」人で、お母さんと奥さんの不仲から、奥さんが家の倉庫に火をつけて、お母さんを殺そうとした事件から「別れて」いると言っていました。
執行猶予は付いたものの、娘のために会わないでくれと頼まれたことから葉山先生は東京に帰ることをやめていました。
葉山「会ってもいいのかな……」
泉「会いたいんですね」
葉山「……会っても傷つけるだけだと思った。だから、僕のことは忘れて、別の幸せを見つけた方がいいんじゃないかって。でも、僕だけだった……立ち止まっているのは……」
葉山先生の自宅に上がった泉。奥さんの刺繍が入ったソファーの上のクッション、テーブルの上に置かれたティッシュケース。
机の上には奥さんと葉山先生の2ショット写真。
至る所に残る、奥さんの姿。
泉「この映画、嫌いって言ってた」
棚の押し込まれた映画のDVD。
それは昔葉山先生が「好きじゃない」と言った映画で。
葉山「妻のなんだ」
この辺りで「うわ、すっごい嫌な予感する」と思い始める僕。ですが、展開は斜め上でした……
泉「先生、髪伸びましたね」
葉山「ちょっと放置しすぎちゃったかな……ねぇ、切ってくれる?」
泉「だいぶ酔ってますね」
この辺全然意味わからなくて、展開においていかれた僕はぽかーんって感じでした。
全体的に話がここから急加速します。
お風呂場で髪を切る泉に葉山先生は奥さんと「離婚していない」ことを告げます。
葉山「もっと早くに言うべきだったんだけど……言えなくて」
確かに、一応奥さんいる身でありながら、泉ちゃんに期待させるような行動とってた葉山先生も悪いとは思うんですけど。泉ちゃん振られてるし、絶対「言わなきゃいけない」わけではない気がします。僕は。
葉山先生が謝罪しているのは「別に女がいるから君の気持ちには答えられないけど、それでも(それを知らない君を)頼っちゃってごめん」なんだろうな……
泉がこの辺りでキレます(?)
シャワーを葉山先生の顔にかけて、その中でなぜかキスシーン突入。
(僕:難しいな、この映画……)
シャワーの湯気でお風呂場が煙るなかでシルエットだけが重なる演出素敵でした。
葉山先生の言葉以来、二人が個人的に会うことはなくなりました。
文化祭準備にバタつく中で、後輩たちの間にもなんだか微妙な雰囲気が漂ってはいるのですが……直接的な介入をすることはありませんでした。
※イケメンの方の後輩くんと紅一点の後輩ちゃんが一緒に帰ったりするシーンがのちのち大事になったりします。
文化祭が本番に近づくにつれて、泉が考えているのは“もう葉山先生に会えなくなるんだ……”ということでした。
もともと文化祭の劇のピンチヒッターとして呼ばれていたわけで、本番が終われば泉が学校に来ることはなくなります。
大盛況で終わる劇とは裏腹に、泉の心は晴れません。
打ち上げをするから〜と部室に泉を呼びに来た小野くんはそんな泉を見て「今から実家に帰ろうと思うんだけど一緒に来ない?」と誘います。
付き合ってないし、振られてるけど、いきなり実家とかハードルが高いね??
まあ泉は一緒に行くんですけどね……(何でだよ n回目)
彼氏でもない小野くんの実家に泊まったり、観光をして一緒に過ごした泉ちゃんにやっぱり小野くんも期待しちゃうわけで。
小野「……やっぱり俺、工藤さんが好きだ」
ここまで来ると痛々しいというか。小野くん……ってなりますよ。
その気持ちはわかる。わからないけど。
泉「……うん、いいよ。付き合おう」
どう考えても葉山先生から「逃げた」だけなんですけど。
この泉の対応に対して「自分を好きになってくれたんだ!」と勘違いしたであろう小野くんが怖くて怖くて。あちゃーって感じです。
こうして二人は付き合い始めますが、まあ幸せになんてなるわけがない!